すでに、『手に取る日本史教材・入手と活用』『手に取る公民現代社会教材・入手と活用』『続・手に取る公民現代社会教材・入手と活用』などには、授業で使える音楽が多数紹介されています。私も大いに参考にさせていただきました。
このコーナーでは、これら以外で私が使ったもの、使えるのではないかと考えている音楽についてご紹介します。ただ、著作権が気になりますので、歌詞の引用については極力さけます。この点、ご理解ください。また、ご意見ご感想や情報などもお寄せ下さい。 →くげてつや掲示板へ
SMAP「世界にひとつだけの花」
同名シングル曲
今世紀(21世紀)最大のヒット曲となったこの曲。花の美しさを引き合いに個性の大切さ、人間がすぐに争い一番になりたがることを戒める歌なのですが、ご存じのように、アメリカのイラク戦争への反戦歌的に集会などで歌われていました。
もちろん、この歌詞とイラク戦争とは直接には何の関係もありませんが、異文化を理解しようとすること、自分たちのスタンダードが世界の常識ではないことなど、かの国に聞かせてやりたい歌詞ではあります(^^;
また今回、反戦運動の層の広がりや、参加する若者たちの様子がこれまでの反戦デモとは違ってきたことが指摘されています。この曲は、そのことも象徴しているかもしれません。それから、これは歌の内容とは全然関係ないのですが、この歌は(最近の流行歌には珍しい)きれいな75調の歌です。
75調(7・5のくり返し)は、日本文化史でいうと今様(『梁塵秘抄』)のリズムです。これまで、史料集にある今様が75調であり、のちの日本の歌謡の原型であることを説明するのに、「どんぐりころころ」や「水戸黄門」のリズムで歌ってみせていました。これからは、この曲も使えますね。
ミニモニ。「ロックンロール県庁所在地〜おぼえちゃいなシリーズ」
同名シングル曲
もとの曲(by 森高千里)は下の方でご紹介しています。
じつは、最近は森高を知らない高校生が増えていて、この曲の話をしてもイマイチでした。今をときめくミニモニ。が歌ってくれて(?)、いっきにメジャーになりました。
埼玉県は「さいたま」にちゃんと直されているので、森高さんのと並べて聞くという技法もあるかなあ。
森山良子「さとうきび畑」
同名シングル曲
森山良子さんはこの曲を1970年以来歌いつづけてこられましたが、昨年(2002)=沖縄返還30周年、シングル化されました。他にも色々な歌手がカバーしてきています。
沖縄のさとうきび畑の下には、太平洋戦争末期の沖縄戦の犠牲者が今でも眠っているといいます。この歌は、11番という長い長い歌詞とくり返されるリズムの中に、「鉄の雨」で亡くなった父親への思いを込めます。激しい告発ではない、静かな静かな曲です。
沖縄問題は、歴史でも現代社会でも、避けて通れない問題です。また、基地や戦争をめぐって、絶えず新しい問題がくり返し提起されています。この曲がブームになたことも、その一つなのかもしれません。以上は2003.6.10.UP分です。
中島みゆき「4.2.3」
同アルバム『わたしの子供になりなさい』所収
これは、沖縄県の佐敷さんから掲示板にいただいた情報からです。ありがとうございます<(_ _)>
この曲は、1997年のおきたペルー日本人大使館占拠事件を素材としています。場面はペルー兵の突入。偶然それをテレビでみていた、という設定です。
曲は、事件そのものにではなく、日本社会へ向けられています。日本人の安否しか問題にしない報道。そういう日本の社会に警鐘を鳴らしています。
RC Succession「Imagine」
同アルバム『Covers』所収
このアルバム自体は『手に取る公民現代社会教材・入手と活用』で紹介されています。収められている曲はアルバムタイトル通りカバー曲で、特に「ラブ・ミー・テンダー」や「サマータイム・ブルース」は、原発への不信を歌ったもの(替え歌に近い?)です。
このアルバムのラストを飾っているのが「イマジン」。もちろん、ジョン・レノンのカバーですが、こちらは素直な?訳になっています(訳詞は忌野清志郎自身)。
これまで何度か授業で「イマジン」を聞きましたが、英語の歌詞は(プリントしたとしても)難しく、和訳を読ませてもイマイチ響かないものがありました。その点、この訳詞は簡潔でいいものだと思います。昨年の米テロ事件をきっかけに、世界が危うい方向に流れているように思えます。次に「イマジン」を聞くときは、この曲を使うつもりです。
長渕剛「静かなるアフガン」
これは最新のシングルです(^_^)
戦争を批判する曲は数々あれど、長渕らしく(?)非常にストレートな歌詞です。「ブッシュ」「ビンラディン」「日の丸」「星条旗」といった言葉がまともに出てきます。
アフガニスタンにおける戦争は一応収束しました。しかし、すべてが終わったわけではありません。新たな戦場が模索されています。この曲のメッセージは、残念ながら生き続けています。
以上は2002.6.10.UP分です。
岡林信康「手紙」
同LP『私を断罪せよ』所収
同和教育の教材として有名な曲。部落差別によって恋人との間をひきさかれた女性の心情が伝わってきます。これが実在の「手紙」をもとに作られた歌であること、それが「遺書」であることは、聞き終わったあとで話してあげることにしています。
「自分は差別をしないから関係ない」という考えに落ち着いて?いる生徒に訴えかけるには、結婚差別やそれによる悲劇が、もっとも身近で現実的なものの一つに思えます。
童謡「汽車ぽっぽ」
この有名な歌は、最初は出征兵士を見送る歌として作られたものです。
歌詞も当然いまのものとはちがっていました。兵隊を送る汽車、それを見送る日の丸と万歳の声が歌われていました。いまの歌詞は戦後になって改作されたものです。
子どもの歌にまで反映する軍国主義。いい導入になると思います。
また、「海」も軍国主義(海外への拡張意識の高揚)のために作られた曲だったとか、「たき火」は戦時中は歌うことが禁止されていた(たき火は空襲の際の目標になる)とか、「お山の杉の子」は歌詞に問題があるとしてGHQに禁止されたなど、この前後の時代を象徴するエピソードはけっこうあります。
童謡「棒が一本あったとさ」
コックさんの絵描き歌です、と言えば思い出される方も多いと思います。
なぜこの歌が教材になるのかというと、この絵が黒人のステレオタイプであるという批判が出て、サンリオが絵本を発売中止にしたという事件があったからです。
黒人差別の問題については、絵本『ちびくろサンボ』(図書館で借りることができました)や(昔の)カルピスのマークなどが有名ですが、この歌も加えていいかと思います。
以上は2000.11.25.UP分です。
さだまさし「風に立つライオン」
同CD『夢回帰線』所収
アフリカで医師として活動する主人公の目には、アフリカと日本がどう映るのか。事実に基づいて作られたであろう曲だけに、その言葉には胸を打たれます。
授業でじっくり聞かせてみました。最後の「おめでとう」の意味が分かるかなぁ....。
さだまさしの曲には、平和教育関連で使えそうなものが多い。「桃花鳥」「片おしどり」「祈り」などなど....。
嘉門達夫「国会議員体操」
同CD『オー!マイガー』所収
このアルバムには「政見放送その1〜5」もある。嘉門達夫には「ハンバーガーショップ〜国会編〜」など、政治をおちょくっているものが少なくないが、この「国会議員体操」は最高傑作。授業で流せばかなりウケます。ご存じない方はぜひお聞きください。
森高千里「ロックンロール県庁所在地’95」
同CD『DO MY BEST』所収
いえ、そんな真面目に使おうというわけではないのですが、BGMとしてはなかなか良いのではないかと思っています。
県庁所在地って、就職試験ではかなりメジャーです。教員でも他教科の人は(社会科でも専門によっては?)以外と「危ない」かも知れませんよ。いかがですか?以上は2000.2.26.UP分です。
SNAKE MAN SHOW
さて、このグループ?のCD(レコード?)が現在入手できるかが問題です。私もかなり昔に「入手」したものを使っているのですが…。
曲の合間のコント?の中で、授業で使えそうったことがあるのは次の3つです。「正義と真実」(『SNAKE MAN SHOW』所収)
選挙の街頭演説とチリ紙交換の掛け合いです。勝ったのは....。「これなんですか」(『SNAKE MAN SHOW』所収)
薬屋さんの店頭にてコンドームを買いたいが恥ずかしい男は....。
なお、FOR BEGINNERS『性』(現代書館)136ページにイラスト入りで紹 介されています。「愛の戦場」(『NO MORE FIGHT』所収)
戦場からの生レポート。弾に当たった人へのインタビューがとんでもない。どちらのアルバムもちょっと(かなり)エッチなものがありますので、ご注意ください。
以上は2000.2.12.UP分です。
同CD『マンゴーシャワーラブレター』(VILLAGE PRESS)所収
タイの貧困地域イサーンのことを歌っている。それだけで貴重。とにかくきれいで哀しい曲。南北問題の授業で使えるのでは。
3年生の最後の授業で聞かせました。イサーンの説明だけしました。反応は....少し難しかったかもしれません。
同CD『LOVE OR NOTHING』(PONY CANYON)所収
中島みゆきのことですから、CDには何の解説もありません。しかし、この曲はボスニア紛争のことを歌っているようにしか考えられません。
歌詞も配って考えさせてみたいと思っていますが、未実施です。
なお、同じアルバムの「アンテナの街」も使えそうです。
副題は「サヌカイトの楽器が奏でるはびきののメロディー」。
1992年に羽曳野市役所近くの翠鳥園移籍遺跡から石器づくりの跡が見つかったことや、サヌカイトの産地である二上山が近いことから、このCDが企画されたようです。
サヌカイトは叩くとよい音がするので、カンカン石とも呼ばれています。これを使って木琴状のものを作り、羽曳野市歌、田園、春の小川、旅愁といった曲が演奏・録音されています。
入手したのは1997年。新聞に紹介記事が出ていたので申し込みました。いまでも入手できるかどうかは分からないのですが、なかなかいい音ですよ。
以上は2000.1.22.UP分です。