たとえばこんなテーマ学習(5)

教室で「入札」体験

2003.8.24.

 経済の授業の中で、需要と供給の関係はやはり避けて通れないポイントだとは思うのですが、生徒にとっては、用語の難しさもあってなかなか実感を持てないようです。
 そこで、教室で「入札」を実施し、需給バランスを「体験」させています。簡単で手軽な方法なので、ご紹介しておきます。特に夏の暑い日には、効果があります(^^;

進め方

 最初に、生徒に白紙を配り、名前を書かせます。「テストか?」と思っている生徒の前に、(夏なら)いかにもよく冷えた缶ジュースを示します。

「このジュースをいますぐ誰かに売ります。いくらまでならお金を出してもいいか、書いてください。」
「ホントにいま売るの?」
「ホントです。特別に、授業中ですが、飲んでもいいことにします。」

 ここまで言えば、"本気"になってくる生徒もいて、なかなか盛り上がってきます。全員分集まったら、開票。買う気のない者は当然0円と書きます。多くの者は定価(120円)を書きますが、定価を超えるものも出てきます。順に名前と金額を読み上げていくのですが、「おお!」と声があがったりして、なかなか楽しい雰囲気になります。

「さて、オレはこの中の誰にジュースを売るでしょう?」
「そら、一番高いヤツやろ。」
「そう。つまりこのジュースの価格は**円ということになる。けど、それは1本ならや。もし2本目があると…」

 こう言って2本目のジュースを出すと、演出効果は高まります。

「すると、これは2番目に高い値段で売れることになるわな。」

 この2本の平均が、平均価格になるわけです。3本あれば3番目まで..という具合。これは生徒にも分かるでしょう。

「さっき説明したように、価格は需要供給のバランスで決まる。需要は買う方、供給は売る方やったな。この場合、売る方はオレで、買う方はみんなやから、買う方がずっと多い。だから価格は高くなる。ただし、ジュースが1本から2本に増える、つまり供給が増えると、価格(の平均)は下がる、というわけや。」

 時間があれば、逆のパターンもできます。たとえば、「いますぐシャーペンを1本ほしい。みんなの持っているのを売ってほしい。いくらなら売ってもいいか、書いてください。」という風に。
  いまどきの生徒は文房具は豊富に持っていますから、かなり安値がつきます。一番安いのは50円くらいになると思います。
 この場合は、需要が私であり、供給が生徒ですから、供給過剰になって価格は下がります。これも分かりやすいでしょう。

「こうやって価格は決まるわけやけど、それには条件がある。たとえば、値段を書いている途中でオレが席を外したとしよう。そのスキに、みんなでこっそり話を合わせて、全員が同じ値段を書いたらどうなる?」
「その値段で売らなしゃあない。」
「10円でも5円でも、その値段で売るしか ないわけや。」
「そうか、その手があったか!」

 コレコレ、それは"談合"です(^^; このように、需給関係でちゃんと価格が決まるのは、自由競争が前提であること、逆に言えば独占市場にはどのような問題があるかが、分かってもらえると思います。

 

余談

 上の例だと、私が差益を得てしまうので(それもまた教材ではありますが。つまり、原価と利潤の関係とか、より高い利潤を得るためにはどのように売ればいいかとか)、わずかな金額ですが立場上マズイので、差額はあとでこっそり返しましょう(^^;


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