世界史の授業と国旗3 北欧諸国の十字旗
- 北ヨーロッパの国旗はデザインが非常に似ている。これは、これらの国の歴史が互いに密接かつ複雑に「関係」してきたことを示しており、最も強国だったデンマークの国旗がもとになっていると考えられる。(↓頁末に略年表)
- ノルウェーは、1380年以後はデンマークの支配、1814年以後はスウェーデンの支配を受けた。1905年には独立を達成したが、その際、デンマークの王子を王に迎えてノルウェー王国となった。国旗は、スウェーデン支配下の1821年に決められたがデンマークの色に近い。なお、赤白青の配色は英・米・仏と同じで、当時のヨーロッパでは自由を表す色とされていた。
- アイスランドは、ノルウェーからの移民が多い。また、982年にはグリーンランド、1000年にはアメリカ大陸を「発 見」するなど、活躍した。1262年以後はノルウェー王の支配を受けたが、そのノルウェーが1380年にデンマークに支配されると、アイスランドもグリーンランドもデンマーク領となった。1918年に独立宣言はしたが、デンマーク王との同盟は 残った。第二次世界大戦でドイツがデンマークを占領し、敵対する米英がアイスランドを占領したため両国は完全に分離。1944年 にはアイスランド共和国として完全独立した。国旗は、赤は火山、白は氷河、青は空を表すという。独立宣言した1918年に作られたが、ノルウェーに似ている。
- フィンランドは、1155年、西隣のスウェーデンによる東方十字軍に制圧され、支配を受けた。1809年には東隣のロシアがフィンランドを制圧し た。ただし、ロシアはフィンランドの不満をおさえるため、大幅な自治を認めていた。その後、ロシアに社会主義革命が起こってソ連ができたが、その中で1917年に独立を宣言してフィンランド共和国となった。国旗は、1870年にある詩人が詠んだ「祖国の湖の青さと雪の白さ」という詩をもとにしている。
- スウェーデンは、1155年にはフィンランドを制圧するなど強国であったが、14世紀には内乱で弱体化し、1389年にデンマークに併合された。その後は徐々に独立を取り戻し、1523年には完全に独立。1809年にフィンラ ンドを失うが、すかさず1814年にはノルウェーを制圧した。1905年にはノルウェーが独立し、現在のスウェーデン王国 となる。国旗は、デンマークから独立したあとの1528年に使われ始めた。青は湖や川・海を、黄色は太陽を表すという。
- デンマークは北欧で最も強大で、11世紀にはイングランドをも支配していた。1219年には東方十字軍として、 海を渡ってエストニアへ遠征した。1380年にノルウェーを、1389年にスウェーデンを併合し、1397年には3国 が同じ王のもとの統一を達成した。その中心人物は、デンマークの王女であり、かつてノルウェー王妃でスウェーデン王妃でもあったマルグ レーテで、この同盟をカルマル同盟という。その後、1523年にスウェーデンが同盟を離脱し、1814年にはそのスウェーデンにノル ウェーを奪われるなど衰退して、現在のデンマーク王国となった。国旗は「ダンネブロ」と呼ばれ、世界最古の国旗とされている。1219年のエストニア遠征の時、苦戦していたデンマーク軍に空からこの旗が舞い降り、戦いを勝利に導いたという伝説が広く信じられている。
補足資料 北ヨーロッパ略年表1101 デンマーク・スウェーデン・ノルウェー三国不侵略の盟約
(コーヌンガヘッラの盟約)
1155 スウェーデンによる東方十字軍、フィンランドを制圧
1219 デンマークによる東方十字軍、エストニアへ遠征
1262 ノルウェー王がアイスランドを支配
1319 スウェーデンで内乱、ノルウェー王がスウェーデン王を兼ねる
1343 スウェーデンで内乱とデンマークとの国境紛争始まる
1380 デンマーク王がノルウェー王を兼ねる
1389 デンマークがスウェーデンを併合
1397 ノルウェー・デンマーク・スウェーデンが同じ王のもとに統一
(カルマル同盟) マルガレーテが摂政として君臨
1448 スウェーデンが摂政を立てて事実上同盟を離脱
1523 スウェーデンが同盟を完全に離脱
1661 ノルウェー、デンマークから形式的に独立
1784 ノルウェーに独立運動おこる
1809 ロシアがフィンランドを制圧
1814 スウェーデンがノルウェーを制圧
1905 ノルウェー独立宣言。デンマーク王子を王に迎える
1917 ロシア革命。フィンランド共和国独立宣言。
1940 第二次大戦でドイツがデンマーク占領、アイスランドは米英が占領。
1944 アイスランド共和国独立。