古銭(1)
2002.05.01.


 古銭を使った授業は、試みられた方も多いと思います。
 私としても、特に目新しい使い方を考えたというわけではありませんが、そこそこ量は持っていますので、今回はこれをご紹介してみようと思います。


もっとも入手が容易なのは「寛永通宝」でしょうか。コインショップでも普通に見かけます。場合によっては、10枚100枚単位で売っている店もあるほどです。

 私は現在50枚ほど持っています。江戸時代の経済の授業の時には、生徒一人に一枚が行き渡ります。これだけ枚数がそろうのは寛永通宝ならでは。生徒もワイワイと盛り上がります。


 よく見ると、一枚一枚微妙に違います。摩耗などによる差もありますが、そもそものデザインが違うのです。隣近所の生徒と比べさせてみると、それでまた盛り上がります。

 実はこれが一つの話題です。現在の貨幣は国家(造幣局)が統一して製造してますからみな完全に同じですが、江戸時代の貨幣は国家(幕府)が鋳造しているのではなく、金座・銀座・銭座に幕府が鋳造権を与えるという形式だからです(その意味で、国が貨幣を鋳造するのは古代の皇朝十二銭以降、明治政府の新貨条例までない、ということになるわけです)。

 ところで、同じ「寛永通宝」でもかなり違うものがあります。明らかに大きい。これが田沼政権下(明和五年)に新しく発行された「真鍮四文銭」です。区別のために裏に波(青海波)の紋様がつけられていて、「波銭」と呼ばれていました。

 確かに従来の一文銭よりも大きいですが、もちろん4倍はありません。それを四文の貨幣として流通させようとしたわけですから、一種の管理通貨をめざしたと考えていいと思います。民衆の反応は厳しかったようですが..。
 田沼の経済政策を考えさせる糸口にはなると思います。

 次回は、寛永通宝以前の渡来銭をご紹介する予定です。


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