上のAは昭和5年発行の兌換10円紙幣、Bは昭和18年発行の不換10円紙幣です。ほとんど同じデザインであること、比較的入手しやすいこと(美品でない限りどちらも数百円で買える)から、教材としては最適です。
AとBの拡大を比べて見ると、Aにはちゃんと「日本銀行兌換券」とあること、「此券引換に引換に金貨拾圓相渡可申候」とあるのが分かります。
兌換制度については、授業の機会が2回あります。明治初期の国立銀行や松方財政の時と、昭和初期の金解禁の時です。制度やその意義の説明は非常に難しいですが、こういう教材を使うことで、生徒の関心や実感を呼ぶ助けにはなります。
さて、もう一つの「和気清麻呂紙幣」が、アジア太平洋戦争期の軍票です。
上記の不換10円札に「軍用手票」を印刷しただけ、というのがミエミエです。裏(下写真C)には、「此票一到即換正面所開日本通貨」とあります。中国語です。「この紙幣は表に書かれている金額の日本通貨と交換する」という意味でしょうか。
軍票は、日本軍が占領地での物資調達などのために発行したもので、その乱発によって各地で猛烈なインフレをひきおこました。また戦後は紙クズ化して現地の人々に経済的な被害を与えました。アジア太平洋戦争の授業、特に日本の戦争犯罪・戦後補償の問題の良い教材です。
C D
上のDは100ルピーの軍票です。デザインがいかにも、です。ちゃんと漢字とローマ字で「大日本帝国政府」と明記されています。
これら軍票は、大量に発行されたということもあって、いずれも廉価です。廉価であることに教材価値がある、とも言えますね。